(「道経塾」 2013年3月号 有限の損 無限の損 特集 掲載記事 : 公益財団法人 モラロジー研究所 発行)
破綻寸前からの再建と十九年連続黒字、ダイバーシティ経営、生涯雇用宣言……。
一九六八年創業の輸入商社・(株)日本レーザーの経営が今、注目を集めている。「会社はなぜ存在するのか。それは働くことで得られる喜びの場を人々に提供するため。人の雇用こそが経営のいちばんの目的です」。異色の経営を生んだ理念、その背景にはどんな物語があったのか。近藤宣之社長に話を伺った。 (聞き手=本誌編集人)
あらゆる成長の機会に投資せよ
---- 人生の最短距離は直線ではない
人に投資してこそ会社は伸びる
「おはようございます。近藤です。今日は当社まで取材に来ていただいて。まずは目覚めのコーヒーでも飲みましょう」
年明け、とある平日の午前九時、東京・西早稲田の日本レーザー本社を訪れると、時間ぴったりに笑顔の近藤宣之社長が颯爽と現れた。銀行も見放した日本レーザーの再建に取り組み、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞に輝く企業へと大変身させたその人である。企業再建を成したリーダーは共通して明るい。
同社は昭和四十三年に日本電子㈱(東証一部)の一〇〇%子会社として設立。アメリカ、ドイツなど海外からレーザー機器を輸入し、大学、研究機関、大手企業等に販売する輸入商社として四十五年の実績をもつ。社内に技術部門を置いてカスタムオーダーやアフターサービスを充実。「総合的な光によるソリューション」の提供を事業ドメインとする。
ビル一階は技術部門。メインオフィスの二階は、仕切りのないワンフロアに経理から営業まで四十人ほどのデスクがズラリと並ぶ。その全体が一望できる位置に社長のデスクがある。
「社長室なんてものはありません。窮屈なだけですから(笑)。見てお分かりのとおり、うちは三分の一が女性です。彼女は総務課長で今年度、パートから契約社員になりました。経理課長の彼女は派遣社員で九年目。こちら上海出身の方さんは、システム機器部の課長で日本に来て十五年、うちに来て十二年目です」
フロアを案内しながら、近藤社長は一人ひとりの名前や肩書きはもちろん、勤務年数や経歴まで、一枚の資料も見ず、すらすらと説明していく。
全社員五十七名のうち十七人が女性で、その六名が管理職という比率の高さもさることながら、パートや嘱託、派遣などいわゆる「非正規社員」を総務や経理課長など要職に就ける人事政策は異色だ。どんな意図があるのか。
...(以下略)
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