(労働新聞 2023年9月4日 『ぶれい考』掲載記事 : 株式会社労働新聞社 発行)
ぶれい考
個別面談を経て賃上げ
(株)日本レーザー 代表取締役 近藤 宣之
今年の賃金交渉の平均賃上げ率は、3.6%だった。1990年代のはじめにバブル化した日本経済が崩壊して以来、ほぼ30年ぶりのことである。
その30年間、日本の賃金は上がらなかった。一方で、他の海外の先進国では、賃金は上り続けている。今では韓国でさえ、一人当たりの勤労者の賃金水準は日本より高い。背景には、日本の産業界、とりわけ製造業の企業が、研究・開発分野で他国に先鞭をつけても、市場が求める製品化で遅れを取ったことや、コストダウンを求めて中国でのモノづくりを優先したことなど、経営戦略上の課題もあった。
賃金交渉は、企業の経営側と、労働組合の間で行われるが、労組の推定組織率は16.5%と過去最低である(厚生労働省調べ)。そのため勤労者の側からも労組不要論さえ聞かれる。それならばと、賃上げ交渉を組合に任せるだけでなく、勤労者自身が、自分の市場価値を自覚して経営者と交渉すれば良いのだが、そうした風土も意欲もない。待遇に不満ならば退職するしかないが、欧米のような労働市場の流動性も低い現状では、転職によって給料が上がる労働者は少ない。
...(以下略)
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