(「理念と経営」 2012年 3月号 巻頭対談【零からの出発 - 創造と前進 -】 掲載記事:株式会社コスモ教育出版 発行)
債務超過に陥った日本レーザーを見事に立ち直らせ、社員のモチベーションをさらに強めるために、親会社から独立して経営の自由度を高めた近藤社長の信念は、「そこまでやるか」と言いたくなるような「人を大切にする経営」であった。そこには中小企業が永続するためのヒントが隠されている。企業調査の第一人者・坂本教授の案内で近藤社長のお話をじっくり聞こう。
坂本─近藤社長さん率いる日本レーザーは、昨年度、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で、中小企業部門の最高の賞である「中小企業長官賞」を授与されました。
近藤─ありがとうございます。
坂本─この賞は「人を幸せにする経営」を行なっている会社の顕彰制度です。「人」とは、①従業員、②外注先・仕入れ先、③顧客、④地域社会、⑤株主のことですが、御社は審査項目をほとんどクリアしました。
近藤─私は今まで会社再建の経験が多く、その過程で、日本的経営やアメリカ的経営を学んできましたが、「社員が成長することで、会社は成長する。社員のモチベーションが高まることで、会社は再建できる。その逆をやれば、会社は必ず潰つぶれる」ことを実感してきました。
坂本─御社はレーザー専門商社の草分けですね。
近藤─はい。一九六八年(昭43)の創業で、海外から最先端の光の技術やレーザーを輸入して販売するのが基本的なビジネスモデルです。同時に、世界から導入したコンポーネント(部品)やソフトウエアを組み合わせて、日本レーザー・ブランドの自社製品も造っています。自社製品の売り上げに占める割合は一〇㌫ほど、残りの九〇㌫は主に輸入販売です。
ただ、輸入販売にあたって、納入作業、アフターサービス、あるいは、カスタムオーダーに応じて、技術的な付加価値を付けています。ですから、“右から左へ”という輸入商社ではありません。
そのために、従業員は五七名いますが、二割は技術員で、営業員の二割も大学院卒でドクター(博士)やマスター(修士)の資格をもつ技術系社員です。また、派遣やパートさん以外の社員、役員、定年再雇用の嘱託社員のすべてが株主です。海外にも技術や海外情報の顧問がおりますが、全員が“働く仲間”だと考えています。
直近の業績は、二〇一〇年(平22)十二月期決算で売り上げが三九億円、経常利益が三億三三〇〇万円でした。正社員は三六人ですから、中小企業としては良い成績ではないでしょうか。
我々のような中小企業が、四四年も生き残れたのはスーパーニッチだからです
坂本─ 御社はきわめて製造業、あるいは、研究開発型業に近いサービス業ですね。しかも、独自のアイデアを組み込んだ商品が一割あるということですから、二次産業(加工)でも三次産業(サービス)でもなく、いわば、“二・五次産業”ではないでしょうか。
近藤─ ええ。会社の定義は、顧客が抱える問題を解決していく「ソリューション・プロバイダー」です。それには「海外の最先端のこういう品物がいいですよ」、あるいは、「このような研究を進めたらどうでしょうか」といったハードやソフトの提案もしますから、サービス業と言っていいかもしれません。
結局、我々のような中小企業が四四年も生き残ってこられたのは、スーパーニッチだからなんです。
...(以下略)
※全文は添付ファイルを参照ください※